2013WBC準決勝 ダブルスチール 解説

 

そろそろほとぼりが冷めたころかな、というとこで、僕なりにこのプレーの解釈を。


WBC準決勝 ダブルスチール

 

まず、大前提としておぼえておいてほしい2つのポイント。

1.「盗塁」のサインは100%ランナーが盗塁を企画するというものではない。

もちろん、サインを出されたランナーはスタートを切ります。が、明らかにスタートのタイミングが遅れ、アウトになる確率が高いとランナー自身が判断した時には盗塁するのをやめて元の塁に戻ります。

一方、スタートが良かろうが悪かろうが絶対にランナーがスタートを切って次の塁を目指すプレーが2つあります。わかりますか?

1つがヒットエンドラン。もうひとつがスクイズをはじめとしたバンドエンドランです。この2つのプレーは基本的にバッターがバットにボールを当てる前提でランナーを動かします。

 

2.1・2塁のケースでのダブルスチールは、2塁ランナーがイニシアチブを持っている

当たり前ですね。2塁ランナーがスタートを切っていないのに1塁ランナーが2塁を目指しても、そこには前のランナーがいるので行き止まりになってしまいます。

1塁ランナーはしっかりと2塁ランナーの動きを見ながらスタートを切らなければいけません。

 

この2点を理解したうえで例のプレーを見てみましょう。

日本のベンチからは「(ダブルスチール)いけたらいけ」というサインが出ていたといいます。

2塁ランナー井端はサインをみて、投球時にスタートを切った。同時に井端をみながら1塁ランナーの内川もスタートを切った。

が、自分のスタートが遅れたと判断した2塁ランナー井端は3塁へ向かうのをやめた。1塁から2塁へ向けて走りだした内川は井端がストップしたのを確認せず2塁へ突進した。

そして2塁ベース直前で盗塁することなく2塁にいる井端に気づいたものの、時すでに遅し。ということです。

最初に書いた2つの大前提を理解したうえで、実際のプレーを見てみると、このプレーについては単に1塁ランナーのボーンヘッドであることがご理解いただけるのではないでしょうか。

 

ここまでならまあ誰でもわかるハナシです。このプレーに対していろいろと批判が出ていたようですので、もうちょっと掘り下げて見てみましょう。

 

「2塁ランナー井端がスタートを切っていないことが原因」

これは明らかに違います。井端はサインを見てスタートを切った。しかしスタートのタイミングが合わずこのまま3塁へいってもアウトになる確率があると判断し盗塁をやめた。ただそれだけのことです。

 

「バッター4番でダブルスチールのサインを出すなんてアホか?」

アホですね。普通なら。でも、そんなもんは素人に言われるまでもなく日本のベンチだってわかってるはずです。「終盤僅差で1死12塁打者4番の場面でダブルスチールのサインを出した理由」が絶対にあるはずなのです。

想像ではありますが、

 

・バッテリーのクセやサインの特徴がわかっており、試合前のミーティングなどでも共有されていた。かつ「いけたらいけ」のサインを試合中に出すこともある、というハナシもしていた。

 

・しかし、バッターは4番。失敗すれば2死2塁。

 

・なので、かなりの高確率で成功することはわかっているが、スタートがヤバかったらやめておけ。100%確実にいけると判断したときだけいけ。

 

こういう意味での「いけたらいけ」だったのではないでしょうか。

台湾戦での鳥谷のスチールの場面、思い出してみてください。

9回1点ビハインドで2死1塁。もしあの盗塁が失敗してたらまわりはどう言ったでしょう。今回のように「こんな場面で盗塁なんかありえん!!」と非難ごうごうだったでしょう。ぜったい。


2013WBC2次予選台湾戦 鳥谷盗塁井端タイムリー

 

成功したから皆が英雄。実行した鳥谷はもちろん、ピッチャーのクイック時間を伝えた緒方コーチも、サインを出したであろう山本監督も。

でも、今回のプエルトリコ戦で「こんな場面で」論を展開している方は、鳥谷の盗塁についても「成功したからいいものの、あんな場面で絶対走るべきではない」と言わなければいけないはずです。見たことないですが。

「あんな場面で」という論調を見ると、僕からすると「素人が一般論を知ったカオして言っている」だけにしか見えません。

プエルトリコ戦のダブルスチール失敗については、内川さえ前のランナーをしっかり見ていたら、なんでもないプレーだったのです。成功していれば1死23塁の大チャンスだったのです。

なので、あのプレーだけにフォーカスすると、責められるべきは内川なのです。だからこそ、自身でもあれだけ責任を感じているのです。

 

ただ、内川がいなければ日本はあの位置まで進出できなかったはず。もしかしたら予選で敗退しアメリカに行けなかった可能性もあるでしょう。

かつ、プエルトリコ戦の敗戦についても、他にも要因はいくつもあります。プエルトリコ投手陣の短い間隔の投球に翻弄された打線。先取点を与えてしまった先発投手。ダメ押し2ランを打たれた能見。などなど。

 

ま、残念ではありましたが、とっても楽しいWBCでした。来週からはペナントれーース!!!

虎講師でした。